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……かなり酔っているのかもしれない。言っていることが支離滅裂になってきている。
それに武市が話していたはずなのに、いつの間にか服部の昔話になりそうだった。
まあ、武市からすれば、あまり触れたくない話題が変わっていったのは願ってもいないことだったが。
湯で泳がせた豚肉を、今度はゆずタレの中に浸しながら、武市は服部の顔をまじまじと見つめた。
目の焦点が、微妙に合っていない気もする。だが、意識はしっかりしているような気もする。話を聞かずに服部を怒らせるのも困るし、かといって込み入ったことを聞きすぎて、後々気まずくなるのも避けたい。
もし万が一、聞いてはまずいような話題になりそうだったら、そこで打ち切りにしよう。よし。
柔らかい黒豚に舌鼓を打ちながら、武市はとりあえず服部の話の続きを聞こうと促した。だがその前に、気になることを聞いてしまっておくことにした。
「服部先生がフランス外人部隊希望だったとは、初めて知りました。ところですみません、名取トウコの話と、フランス外人部隊は、関係あるんですか?」
「まあ、いいから聞けって」
……呆気なくその質問は流されてしまった。
「だから、おれ、フランス語も話せるんだよ。英語はよくわかんねーけどな。まあ、あと、教わったヤツがヤツだったから、ちょっとアングラ入ってるけど」
「……服部先生、どんな人から教えてもらったんですか」
「フランス外人部隊に入隊するにしたって、年とってからじゃ厳しいだろ? 体力的にキツくなる。
で、おれは、自衛隊を、2任期満了で辞めたんだ」
武市の質問は、またもや思い切り気持ちよくスルーされてしまった。
時系列がよく分からなかったが、話の内容から察するに、服部がフランス外人部隊に入隊したいと思ったのは、どうやら自衛隊に所属していた時らしい。
「自衛隊にいたって、防衛大を出てなきゃ、頑張って運良くて陸准尉止まりだろ? 定年までやって曹長クラスか。そう思ったら、なんか、行きたくなったんだよ、フランス外人部隊に」
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