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そのことを思い出し、武市は服部に続けて言った。
「そのストラップ、本物のウサギの足だって噂が立ってますよ。だから女子生徒が怖がって、チョコレートくれないんじゃないですか?」
「……おまえ、やたらチョコレートにこだわるな。そんな欲しそうな顔してたか、おれは」
服部が顔をしかめる。それから携帯を持ち上げた。ラビットフットが大きく揺れる。そのウサギの足を服部は軽く弾いた。そして小さく笑って言う。
「幸運のお守りだ。――生き延びるための」
何か曰くでもあるのだろうか、と武市は一瞬思ったが、口から出たのは全然別の言葉だった。
「……そういえば、服部先生にラビットフットっていうのは、なんか意外ですね。先生だったらスカルクロスとか、かわいいハートではないグロテスクな心臓のハートとか、そっち系のイメージです」
「……おまえん中でおれは、どういうイメージになってんだ。……まさかとは思うが、変な噂流してるの、おまえじゃねえだろうな?」
「いえいえ、滅相もない!」
武市は大袈裟に首を横に振る。
だが、服部はさほど気にしていないようで、携帯を尻ポケットにしまうと駐車場に向かって歩き始めた。武市も慌てて後を追う。
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