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な――――なにをしている。
ウワバミは、状況把握よりも、驚愕(きょうがく)で埋め尽くされていた。
やつの言動が―――駆けめぐる脳神経を駆使しても、わからない。
そもそも、どうしてこのような事態が起きているのか。
しかし、それすらも考える余裕はなく、
ただ、全身をたたきつけるすさまじい威圧に、耐うるしかなかった。
ぬああぁぁぁあああぁぁぁあぁあ――――ッ
羅巌は、全身全霊込めて咆哮(ほうこう)した。
この世のものとは思えぬ―――ケモノの“うめき”だった。
両手いっぱい広げ、ロケットの巨大な先端を全身で受け止めている。
先端だけでも、羅巌の数十倍はあった。
全身をかけめぐる重圧。
ひしめく骨盤。革靴は摩擦で擦りきれ、のろしのごとく煙があがっている。
足が、地面にめり込む。
からだが悲鳴を上げた。
それでも、羅巌ひとりが、天雷の矢を受け止めていた。
すると、徐々にロケットの勢いがなくなり、全身をたたきつける風も止みはじめた。
砂塵(さじん)が、ウワバミの頬をたたいた。
羅巌は、さらにぐいと両手に力を込め、全身を右にかたむけた。
ぐぐぐと、ゆっくり横にたおれる。
同時に――――天雷の矢もおなじ方向に倒れた。
軽い地震が、島を振動させた。
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