その一

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         (一)  硬い土にスコップを突き立てて、俺は流れる汗を拭った。  穴を掘るという単純な作業が、こんなに大変だったとは……。  それでもまだ、一メートルも掘っていない。せめて二メートルは掘らなければならないだろう。  スコップを握り直した俺は、力任せに彫りかけの土に突き刺した。小さな石が混ざっているのか、鈍い衝撃が両手に伝わってくる。それでも痛くなるのを我慢しながら掘り進めなければならない。 「橋爪さん。そろそろこの辺でいいんじゃないですか?」 「何だ、もう疲れたのか。だったら帰ってもいいんだぞ」 「いえ、そういうわけじゃないけど……」  手伝いをさせている俺の後輩がなにやら不審がって、「こんな穴を掘って、何を埋めるんですか」
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