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――4月1日――
「ふふ、久しぶりね」
幻想郷の妖怪、八雲紫(やくもゆかり)は口を開く。
ここは、彼女が住んでいる幻想郷とは別の場所で、外の世界……現世にあるとある神社である。
「……ん?……どうしてまた急に来たかですかって?
それはね~……最近幻想郷で何も起きなくてちょっと暇なのよ」
紫はため息を交えながら言う。
彼女が話しているのは、この神社にいる神様である。
少し明るめの茶色い髪を後ろで一つに結び、ポニーテールにしていて服装はと言うと、なぜか巫女服姿だった。
別にそこまで気にすることではないが、神様が巫女服を着ているのは少し不思議ではある。
そんな彼女は、紫とは昔から仲が良く、たまに遊びに来ていた。
そして口を開き、紫に何か話をかけている。
「……え?……暇なら何か自分でお祭りを開けって言われてもねぇ~……
幻想郷の住民は何か褒美とか面白い物とかが無いと、多分やる気出さないわよ?」
神様はなるほどっと言うかの様に少し頷いた後、ちょこちょこと神社の奥に向かって歩き、ボロボロの棚からある物を取り出した。
「それ……あの勾玉よね?」
それは緑色に輝く、綺麗な勾玉だった。
紫はその勾玉の事を知っている様子だ。
「……この勾玉を幻想郷に持って行って良いってこと?」
神様はただただ頷くだけだった。
「なるほど……この勾玉を優勝した者への褒美として、何かで競うお祭りを開けば良いってことね。
あの子も参加できるような内容にして、ね……」
紫はその勾玉を受け取り、その勾玉を見つめた。
薄らと透き通るほどに綺麗な勾玉。
紫はそれをしっかりと握り締めた。
「……そう言えばもう時間がないのね……
私達にとってはまだ1ヶ月しか経ってないのに。
……じゃ、私はさっそく帰ってお祭りの内容とかを考えなくてはダメね」
そう言うと紫は、右手に持っている扇子を横にスライドさせる。
すると、そのスライドされた場所には無数の目がある紫色の空間の穴、スキマが現れた。
「なるべく面白そうなのをかんがえなきゃね……」
紫は小さく微笑みながら神様にそう告げ、最後に、
「あ、あとあの子なら大丈夫よ。
いろいろとイレギュラーな事も起きたりしたけど、今はあの子なりにちゃんとした暮らしをできてるわよ」
そう言ってスキマの中に入って行った。
1人になった神様はカレンダーを見つめ、小さく呟いた。
「……あと2ヶ月と少し、か」
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