あなたがとても優しいので、私は少しだけ泣きそうになりました

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「オズワルド……何してるんですか、こんな遅い時間に」 「いや、それはこっちの台詞っすよ。貴族のお嬢様が夜遊びっすか?なんか楽しそうな響きだな、俺も混ぜて下さいよ」 私の部下である彼がこの時間まで出歩いているのもびっくりしたけれど、私が深夜に訓練場にいるよりずっとその場に馴染んでいる。 「夜遊びじゃないですよ……今屋敷が騒々しくて寝るどころじゃないので、ちょっと避難してきました」 混ぜ込んだ嘘は、ほんのちょっぴり。 こんなときまで自分は骨の髄までうそつきなのだと、再び落ち込んでしまう。 「ふうん……あ、そっか、今日奥様の出産予定日でしたっけ!」 「はい、元気な男の子が生まれたようです。私も、少しだけ顔を見てきました」 何気なさを装って言ったのだが、オズワルドはしまった、という顔をして言葉に詰まってしまう。 それもそうだろう、男が生まれればいずれ私が跡取りじゃなくなることは、彼もよく知っているのだから。
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