234人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほら、日向」
「ん? え"!?」
日向がむせる。
まぁ、なんでむせたかって、普段は絶対にこんなことをしないであろう汐里が、箸で自分のオカズを掴んで日向の口元まで運んでいた。
そう、これはいわゆる「はい、あーん」での男子悩殺作戦(汐里が前に大々的に発表していた命名)だった。
「ほら、冷めるから早くしなさい。 いらないの?」
「あ・・・いや、もらう。」
日向は滅多に染めない頬を少しだけ染めて、汐里の箸からおかずを食べる。
「おいしい?」
「お・・・おう、うまい//」
「よかった。ほら、さっきあたしももらうって言ったんだからどっちかの頂戴よ。」
「え? あ、ほら、好きなほう一口食って良いよ」
日向がささっと料理を汐里に差し出すが、汐里がジトーっと日向をにらんでいた。
「う"・・・」
汐里はすごい。
伏線・・・いわゆるフラグの立て方がナチュラルかつスムーズすぎて悟られないように立てているのだ。
見習いたい。 見習いたいよその技能。
「ほ、ほら・・・あーん//」
「あーん//」
「熱いから気をつけろよ」
「ひゃーい・・・あっづ!!!!」
「だから言っただろ・・・」
「少しは冷ましてあげるとかいう考えなかったわけ!? この鈍感男!!」
「あぁ!? 人がせっかくお前のフラグ回収してやったのになんだそれ!!」
ギャーギャー怒りあう姿は、やっぱり昔のままだった。
あぁ、でもいいなぁ ああいうの。 楽しそう。
「恭介、あーん」
「ゆう、気持ちはありがたいがそれ豆腐だから、あと少しで崩れて落ちそうだから。」
「おっとっと・・・」
僕は豆腐を崩れないうちに自分の口に運ぶ。
「おいしー//ってちがああああう!!!!!!!」
恭介は、はははと苦笑いして僕をなでた。
最初のコメントを投稿しよう!