Episode.1 Introduction

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程無く。 スピーカーから手数の多いドラムフィルが炸裂し、ディストーションで歪んだギターがイントロのリズムを刻み始める。 曲調は、どメタル以外の何物でも無く、スピーディなバスドラのキックに合わせて一樹の身体が揺れている。 「何事?」 思わず顔を見合わせている麻美とレイを見た一樹はニヤリと笑う。 そして。 「あ"あ"あ"ぁぁぁーーーッ!」 一樹がマイクに叫んだ雄叫びは、甘さの欠片も無い狂った金属質な犬の雄叫びを思わせた。 《im a extormentor》 首筋にぶっとい血管を浮き上がらせ、気が触れた様なハイピッチ&ハイシャウトを続ける一樹は普段からは想像出来ない姿であり、麻美もレイも神村までもが唖然としている。 疾走するリズムがブレイクに入ると、坊主が木魚を叩く様なドラミングに合わせ、一樹はシャウトからグロウルに唱法を変え、お経を唱えるかの様に低く唸る。 その一樹の姿は、神村の華やかさとは比べ物にならない位にむさ苦しく暑苦しいが、そんな事は知らぬかの如く一樹は喜々とした表情を浮かべていた。 曲の最後に三連ハイシャウトをぶちかまし、一樹のカラオケは終了した。 歌い終わって直ぐにお決まりの拍手は起こらず、麻美とレイはぽかんとした表情を浮かべていたが。 はっと気を取り直した二人の拍手と笑い声が起こり、一樹は肩で息をしながら苦笑していた。 麻美の気持ちが一樹へと向いた様に思った神村は、面白くなさげな表情を浮かべている。 「レイちゃん、ちょっといいかな?」 「はーい」 麻美はレイをボックス席へ呼ぶと、神村との接客を交代し一樹が座るカウンターへと戻って来た。
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