Episode.1 Introduction

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「ハハハッ。 信じられ無い声してんだね。 普段は割と低い声なのに」 麻美は一樹のグラスに酒を注ぎながら、初めて聞く歌声の感想を述べた。 「本当。久し振りにヘルプリ歌ったけど滅茶苦茶ハードだわ。 やっぱオヤジになったって事だろな」 一樹は息を切らしつつ、グラスが空になってる麻美へ酒を勧める。 「飲む?」 「勿論」 麻美は嬉しそうに自分が飲む酒を作り、グラスを手にとった。 「君の歌に乾杯ッ」 「んじゃ俺は・・・ 君の美しさに乾杯ッ」 互いにニヤニヤしながらグラスを合わせ酒を喉に流し込む。 一樹が歌った以降は神村がカラオケを歌う事も無く、店内はジャズ系の曲が静かに流れている。 自分のモヤモヤ感を発散させる為に歌いはしたものの、何となく大人しくなってしまった神村を見た一樹は、何か悪い事したなと思い始めていた。 麻美がいない事もあり、レイとも気まずそうな様子でもある。 「麻美ちゃん?」 「ん?」 「あのさ・・・ 俺はまた来るから、後ろの人の所に行ってあげなよ? 麻美ちゃん目当てで来てるんだろし・・・」 「それが嫌なのよ。 アイツが私に触るの見たでしょ? まだ若いのにオヤジみたいにさ・・・ カズ君は飲み行っても女の子に触らないでしょ?」 ほんのり酔ったのか、それとも怒りなのかは解らないが、麻美の顔はちょっぴり赤く染まっている。 「まぁね、変な店じゃ無いしさ。 でも、変な店だったらガッツリ触りまくるかもね」 一樹はタバコに火を点けながらクールに言い放った。 「エロオヤジめ。 でも、それが本当なのにさ・・・ 最近のガキは萎えるわ」 麻美はぶつぶつ言いながら、グラスの酒をぐいっと飲み干した。 「麻美ちゃんもオバチャンになったって事だぁ~。 まぁ、とにかく飲め飲め」 麻美の顔をまじまじと見つめながら、ニヤリと告げた一樹だったが、麻美に軽く腕を小突かれる事となった。 「24の小娘に向かってオバチャンってか? そんな事言うなら、閉店まで拘束確定な?」 「マジでかッ!」 麻美は一樹に構う事無くニヤリと笑うが、こういったやり取りもまたいつもの事である。
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