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「やりぃ~ありがとうございま~す」
営業用とは思えない、心底嬉しそうな表情を浮かべる麻美は。
グラスにビールとトマトジュースを半分ずつぶち込み、ステアーで数回それを掻き回し、即席カクテルのレッドアイを完成させた。
「いっただっきまぁぁす」
共にグラスを合わせた後に、一気にグラスを空けた麻美は至福の表情を浮かべている。
「うわばみめ・・・」
一瞬で酒を飲み干した麻美へ毒吐きながら、一樹は何となく店内を見渡した。
黒の調度品で統一された店内は、中々お洒落でシックな印象を醸し出している。
この店のママは週末しか店に来る事は無く、他にもスタッフはいるものの、これまた週末に出勤する率が高いので、平日は実質的に麻美がこの店を切り盛りしていた。
空になった一樹のグラスへ麻美が酒を注いでると。
《カラン》
とドアベルが響くと共に、薄紫色のドレスに身を包む若い女が、両手にビニール袋をぶら下げながら店内へと入ってきた。
「お疲れ。レイちゃん」
麻美は優しく労う様にレイへ声を掛ける。
「いえいえ。
頼まれてたお買い物、一応全部揃ってると思います」
くるくる巻かれた髪の毛に、付けまつ毛が半端無いレイは、飲み屋よりもメイドカフェとかが似合いそな感じである。
「新人の人?」
初めて見たレイの雰囲気に多少戸惑いつつ、一樹は麻美へ尋ねた。
「うん。
一昨日からウチで働いてるんだ。
レイちゃんは20歳になったばっかなんだって」
麻美が優しくレイを見つめながら一樹へ紹介し終えると、レイはペコリと頭を下げた。
「おお~若いんだねぇ。
俺は城戸一樹ってんだけど、こちらこそヨロシクね。
てか、麻美ちゃんだけ飲んでんのも何だし・・・
何か飲む?」
麻美が優しくレイを見守る気持ちが、何となく一樹は解る様な気がするし、一樹も自然と優しい笑みが浮かんでいた。
「夜のお仕事は初めてだけど。
よろしくお願いします。
あ!飲ませて貰えるんだったら、一樹さんが飲んでるお酒を頂いてもいいですか?」
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