5人が本棚に入れています
本棚に追加
店内に微かに流れていたジャズ系の音楽が止まり。
真っ黒だった店内テレビの液晶画面には、カラオケの映像が映し出され、半年程前にチャートを賑わせていた。
《I for 愛 TAKA4 feat Mik@》
という曲とユニット名が表示されている。
有名グループ同士のコラボとかで話題になり、一樹も曲は何となく耳にしていた。
緩やかだが、跳ねる感じのドラムループにウリッツァの音が乗りイントロを奏で始める。
《雪の様に消えて行くね・・・
二人きりの夜は》
という歌い出しから神村と麻美のデュエットが始まった。
神村の歌は上手いと一樹には思えている。
ピッチが外れる事も無く、声が割れる様な事も無い。
女性が好む様な甘い歌声は、昨今流行りの爽やかな感じなのだろうが・・・
一樹には馴染みが無い分、甘過ぎる歌い方はちょっとだけ苦手とも思えていた。
爽やかに甘ったるしく熱唱する神村。
淡々とその歌に追随する麻美の歌声。
透明感がある伸びやかな感じで麻美の歌も上手い。
グラスのバーボンへ口を付けながら、一樹が何となく後ろのボックス席を振り返ると。
二人は指を絡ませつつデュエットに興じていた。
「うわッ・・・
てか、リアル系オッサンじゃあるまいし」
麻美が神村を苦手としてる事を知ってしまった事や、甘ったるく熱唱する歌声とか、イケメンとのマイナスの方のギャップだとか。
何となくそれを見た一樹は、どんよりとした気分になった。
そうこうする内にカラオケは終了し、麻美やレイの拍手が起こり、一樹もつられて拍手を送った。
最初のコメントを投稿しよう!