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「じゃ、司。今日は帰り一緒の約束だから、昇降口で待ち合わせね。いい?」
兄妹から姉妹へと上下関係が変われば、お互いの呼び方も変化する。家じゃ相変わらず「お姉ちゃん」と呼ぶのに、ひとたび外に出れば「司」と呼び捨てる。相変わらず美衣は使い分けが上手い。
「分かった。み……お姉ちゃん」
それに引き替えボクはといえば、いまだ十八年間のクセが抜けきらず、美衣と呼びそうになって慌てて言い直す。それに気付いた美衣にクスリと笑われ、恥ずかしさから目をそらす。
「もうちょっと気をつけようねー」
「わ、分かってるよ」
弱々しく答えて美衣と別れる。あの態度は完全にお姉さんしている。世間的にはボクの姉なのだから仕方ないとはいえ、なんか釈然としない。ふて腐れながら近くの階段をのぼる。
「よお。司」
二階に上がったところで思わぬ人と遭遇する。気さくに挨拶する男。それはボクの元親友であり、今は部活の先輩である男。お互いにいろいろあって、一年休学した彼は現在高校三年。そしてボクは高校一年だ。
彼にはまだボクのことを何も話していない。彼からしてみれば、ボクはただのいち後輩だ。だからボクもいち先輩として、こう挨拶するのだ。
「おはようございます。颯(はやて)先輩」
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