その1 「ケチ」

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 また強い風が吹く。風さんちょっとしつこいです。……痛っ。左目に何か入った。痛い痛い。  いそいそと鞄から鏡を取り出し、ゆっくりと左目を開ける。鏡に映ったのは、もちろんボクの顔。けれどそれはいまだ見慣れない、『女の子のボク』の顔だ。  その顔は小さく、特に手入れもしていない眉毛は細く形が整っている。二重の目は大きく、鼻と口は小さい。唇は血色の良い綺麗なピンク色をしていて、肌は磁器のように白く透明できめ細かい。まだ発展途上(だと思いたい)な体は全体的にとても小柄で、けれども手脚はすらっと長く、腰の位置は高い。引っ込むべき所は引っ込んでるし、出るべき所は……いや、うん、まあ、自己主張する程度には出ている。銀髪に合わせられたかのような青い目は、今はカラーコンタクトで隠れているが、左目は赤色だ。いわゆるオッドアイ。目立つからと言う理由で青いカラーコンタクトを入れている。  日本ではいまだ珍しい銀髪と青い目のおかげで人目を引く容姿をした女の子。総合的に見て、綺麗と言うよりはかわいい系に入るだろう。正確にはきれかわいい、みたいな感じ。  これが今の自分の姿なのだけど、この姿になったのは僅か数週間前のこと。おかげでまだまだこれが自分だとは認識できていない。そのせいでこうやって自画自賛、ナルシストみたいなことが言えるわけだ。まあぶっちゃけ、以前のボクと違いすぎて他人にしか見えない。  ぱっと見は外国人にしか見えない容姿だが、顔立ちは日本人なのでよく見れば大抵の人は日本人だと分かってくれる。それでもたまに英語で話しかけてくる人がいるが、あれは本当に困る。ボクは英語が一番苦手なのだ。生粋の日本人。あいあむじゃぱにーず。めいどいんじゃぱん。好きな食べ物はジャンクフードです。
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