その2 「だれこれ?」

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 あー、マイクてすてす。ちょっと音が小さい? あーあー。こんぐらい? え? 喋ってみろ? はいはい。なまぐみなまごめなまなまこ! ……なまこってグロいけど美味しいよね。すみません噛みました。  さて、お集まりのみなさんこんにちは。なんか知らないうちにこんな場を設けて頂いて、本当に恨みます。いや、その、なんだ。あれだ。ボクがどういった経緯でこんなことになったのか、なんてことは、別に話さなくていいんじゃなかろうか。そんな人の傷に粗塩をすり込むようなマネしなくてもさ。よし、というわけで解散っ! ……え、ダメ? ちゃんと話せ?  なんでボクが君達に自分の過去を赤裸々に告白しなくちゃならないのか。せめて話す代わりに何か貰えればボクも快く……へ? これをボクに? マジで? 後で返してって言っても返さないけど、それでも? おー、ありがとう! すげぇー、ウニのプラモデルだ。こんなのあったんだ。部屋に飾ろう  さて、いい物もらって気分が良くなってきた。よーし。話そうじゃないか。今日はボクのことでも美衣のことでも何でもしゃべ……ん、どうした美衣? いたたたっ。痛い痛い、痛いって。なんだよ美衣。無理矢理腕を引っ張って。しかもそんな怖い顔……え? な、なんでそんなものを持って……あ、はい、分かりました。以後気をつけます。気をつけるから、その手に握りしめたボクの下着、返してくれないかな?   コホン。みなさんすみません。み……お、お姉ちゃんが急にウニのプラモデルを見たいって言い出したもんだから。あははは……なんで名前呼んだだけで怒るんだよ。ウニ投げるぞコノヤロー。  気を取り直して、ではボクが男だった頃の話から……ん? 男だった頃の話はどうでもいい? むしろいらない、話すな? いやほら、ボクがもの凄く猛勉強して希望の大学に合格した話とか、留学してしまった親友の涙溢れる話とか……あぁ、はい。それもいらない、と。  分かりました分かりました。あー分かりましたよ。じゃあ女になってからの話をしますよ。ふんっ。
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