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それは年度初めの四月。まだ学業に励み、青春を謳歌するボク達にとっては、嬉しい嬉しい春休みのある日のこと。
目が覚めた。昨日までの体中にへばりつくような気持ち悪さがなくなり、窓の外に見える晴れ晴れとした青空のような、清々しい目覚めだった。
額に手をやる。よし。熱も下がっている。昨日までの体の怠さが嘘のように体も軽い。一週間も続いた不調だったが、それもやっと完治したようだ。だーっと両足で布団を蹴り上げる。思ったほど飛ばなかった布団はベッドのすぐ横に落ちた。
やけに布団が重かった。不思議に思うが、きっと汗を吸っていたせいだろうと納得する。後でベランダに干しに行こう。
デジタル式の目覚まし時計を見る。四月一日。午前八時三五分。今日から新年度か。結局高熱の原因は分からずじまいだった。まぁ、治ったのだから結果オーライか。とはいえ、貴重な春休みを一週間も無駄に消費してしまった。時は金なり。非常にもったいない。
それにしても、寝汗のせいで体がベッタベタだ。気持ち悪いことこの上ない。サッとシャワーでも浴びよう。ベッドから立ち上がり部屋を出て階段を下りる。体が上下する度にキラリと光る綺麗な繊維っぽいものが視界に入ってくる。服が盛大にほつれたのだろうか。でも糸ってこんなに細くて光ってたっけ? それに胸の辺りも気になる。肉やら皮膚が僅かに下に引っ張られるような感じ。……そうか。これが人を縛りつける重力というものか。今日は僅かに重力加速度が大きいらしい。あれ、重力加速度の単位はなんだったっけ? あーまあどうでもいいか。
などと病み上がりのおかしなテンションで一階に下りて脱衣所兼洗面所へと向かう。洗面所には先客がいた。妹の美衣だ。美衣も今起きたところのようで、パジャマ姿のまま眠そうな目を擦りながら歯を磨いている。
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