体をもとに戻したい件について

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「それにしても娘の帰りが遅いねぇ、ちょっと玄関まで見てきてくれないかい? 大丈夫、君の存在はもう知ってるから、もとの体のままなら、怪しまれる心配はない。」 「まぁリハビリもかねて、少し動き慣れとくのも悪くないですね。 分かりました、少し見てきます。」  とは言え、スライムの身体で診療所から外へ出るのは、これが初めての試みな訳だ。  俺はスライムの身体を人の姿に変化させた。パッと見ただけならただの人間だが中身はスライムとなんともややこしい構造をしている。いや、単純化したとも言えよう。  人の形を保っての外出とは言え、正直不安はかなりあったが、ずっとこのままでいるよりはましな考えと思い、俺は東馬のオッサンの指示どうりに診療所裏の玄関まで行き、そして驚愕した。 「……!? イャヤアアアア! 人が倒れてるぅウウウウウ!」 「だ……、誰か、ソコにいるデスか? 良ければ、私をそこの……、診療所まで……、送ってくだ……さ――。」  目の前の女性は力尽きた。 「不味い、まずい、マズイ! これは危険信号出しまくってるだろう! 娘のことはこの際後だ! 早くオッサンに見て貰わないと。」  俺が、この日出会った人間のなかで今後一番付き合いが長くなるであろう人物との最初の出会いがこれであった。
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