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多分医師だと思われる人物がベッド向かいの扉の外に見えた。
オッサンは、見た目はスラッとした感じだが中年ぶとりの性か腹の辺りがデップりしていて、スラックスのズボンに腹が乗っかっている。
髭は剃ってはいるが、今一清潔感が無い顔つきをしていた。
髪も少しボサボサである。
「あんた……何者だ?」
白い病院服姿の、困惑した俺の頭が叩き出した答えがそれだった。
「まだ意識が困惑してるみたいだな。
まあ無理もないか、丸一日機関に捕まっていたわけだからな、見た目には変わりはないが、やっぱ人体実験とかされてたのかねぇ」
機関と聞いてピンときたと同時に、頭の白い布地が記憶と共に捲れ上がった。
要するに俺は、魔術機関(まじゅつきかん)に捕まっていたようだ。
魔術機関とは、文字通り魔術師の集団を意味する。
昔なら、ヒーロー特撮のワンシーンみたいに思われるに違いない。
しかし、今は違う。
世界には、怪しげな魔術師達がひしめく大魔術師時代である。
あらゆる電子機器が魔術によって稼働し、魔術師達によってこの世界のシステムが動き始めていた。
こんな拉致事件は、今や日本の犯罪係数並に各地で多発していたりする。
つまり俺は、その犯罪係数にカウントされる被害者と言うことになる。
「俺の身体は、どうなったんだ?」 再び、頭を白いカーテンが被う。
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