43人が本棚に入れています
本棚に追加
訳も分からないままの頭と身体で、俺は目の前にいる唯一の話し相手にそう尋ねた。
すると、オッサンは面倒臭そうに頭をかきながら、俺にこう言った。
「あぁ、なんだ、要は君は僕が機関から助け出して、ここに匿っているわけだ。
僕の名前は日野・東馬(ひの・とうま)。
ヨロシク頼むよ」
日野・東馬と名乗るオッサンの挨拶に対して、とても、医者には見えないやる気のなさを俺は感じていた。
――頭のカーテンが鬱陶しく靡く。
「此方こそ、そう言えば俺の家や両親って?」
――頭のカーテンから窓が見えた。
俺は重要なことに築く。
考えてみたら、家に丸一日帰っていない訳だ。
両親や家族に、これ以上迷惑をかける訳には行かない。
頭のカーテンを開け放ち、俺は、自身の記憶と言う窓を覗き込んだ。
「安心しなさい、君の両親には話を通しておいたよ。
当分コチラで預かることも含めてね。
まぁ悪いようにはしないつもりだから安心してくれよ、水梨・俊君」
窓を開いた記憶の先に、俺は自身の兆を見た。
そうだ、俺、水梨・俊(みずなし・しゅん)には帰るべき家があり、そこで帰りを待つ家族もいる。
冴えない平凡男子の代表みたいな俺ではあるが、顔付きと髪型だけはビジュアル系男子にこだわってきた、そんな普通の男子だった。
最初のコメントを投稿しよう!