或る八重子

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深紅の旗が靡く白樺高校の校舎入口に今日も沢山の生徒が吸い込まれるように入っていく。 生徒達は友達と喋ったり、朝練終わりで先輩や後輩と汗を拭きながら廊下を歩く。 私はというと、三人のクラスメイトとテレビの話題で盛り上がっていた。 柚原胡桃(ゆずはらくるみ)は大きな黒い瞳と長い睫毛をきらきらさせ、時々大きな笑い声を上げる。 胡桃が笑う度に肩まで届く茶髪が弾む。 私は胡桃の話題に頷きながら知っている番組の話には入っていく。 あとの二人、つまりピンクのシュシュで髪を頭の上でお団子にした広瀬七海(ひろせななみ)とツインテールをいじりながら歩く姫川華蓮(ひめかわかれん)はどの話題にも乗り、盛り上がる。 この三人にかかれば、最新流行のファッションも番組も何でも分かる。 私はこの三人の話題についていく為に妹の真由(まゆ)の力を借りて最新の情報を手に入れる。 妹は中高一貫校の中二で受験に対する焦りはなく、とりあえず成績を上位に保っていれば、大抵のことは許される。 だからテレビやファッション雑誌やJ-POPが大好きで勉強しながらそれらの趣味を同時進行していても何も言われない。
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