或る八重子

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真由は良いなって思ってしまう。 さらさらの長い黒髪と笑顔で色んな人達に好かれている。 私は…同じ長い黒髪だけど、くせ毛だからそれをごまかして三つ編みにしてる。 いつも他の人から見られるこの大きな瞳も伊達眼鏡で隠してる。 確か胡桃が伊達眼鏡に気づいて話しかけてきたっけ? 友達も未だいなかった高校の入学式の時に。 私は胡桃は笑いかけて一緒に帰ろうって言ってくれた。 下駄箱の所に七海と華蓮もいて手を振ってた。 最初の友達、すごく嬉しかった。 でも私は程なくして知った。 胡桃がどれほどすごい生徒かってことを。 胡桃は可愛くて気さくで男女問わず、慕われ、遂にクラスの「指導者」になった。 「指導者」となった胡桃は先ず女子の結束を固めるために一人の女子生徒を目の敵にした。 きっかけは些細なことだった。 その女子生徒、山下恵美(やましたえみ)は帰国子女で英語の成績が一位になり、クラスの女子が騒ぎ立てたのだ。 その時、胡桃は二番だった。 胡桃は皆の輪の中にいた恵美を恨めしそうに見つめていた。 その眼差しが怖すぎて震えたことを今でも思い出す。
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