或る八重子

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それからだった。 胡桃が何かにつけて恵美が悪くなるように仕向けたのは。 恵美が一緒に友達と食べようと持って来たケーキを私達に目配せして奪い取ったり、恵美の悪口を皆に吹聴したりした。 私は皆そんなに簡単に流されないと思ってた。 でも皆胡桃の味方についた。 「あの子、英語の佐伯先生に気に入られようと良い子ぶってるの」 「この間なんてバス停で並んでた時に平気で割り込みしてざまあみろって言ったのよ」 「怖い子。英語がちょっと出来てるからって調子に乗ってるんじゃない?」 「ねぇ、靴隠してやろうよ!」 「普通に隠したんじゃ、つまらないよ。 どうせなら上靴に沢山悪口書いて下駄箱に置かない?」 胡桃の提案に皆笑った。 七海も華蓮も。 私は作り笑いをしながら後ろで組んだ手を震わせていた。 …私が「普通」でいるためには、どんなことをしてでも「指導者」の「仲間」で居続けなくてはいけないんだ。 私は小学校の時に学んだんだから。 少しでも他の子から変わってると思われちゃいけないって。 「普通」でいる為には程々の学力と指導者に対する従順さと順応が必要だと。
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