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灰色の扉を開けると―そこは教室でした。
…て当たり前か。
緑色の黒板、教卓、掲示板、机と椅子。
それぞれの席に生徒達が座っている。
未だ空席もあるが、恐らく遅刻か欠席だろう。
どう足掻いてもあと5分で始まる。
いつもの風景。いつものこと。
いつも通りにすれば何も問題ない。
胡桃が笑顔で一人の男子生徒に手を振る。
「桃吉郎(とうきちろう)くん!」
桃吉郎と呼ばれた男子生徒は振り向き、大きな瞳で見つめる。
妹の黒髪に似たさらさら髪でも福沢(ふくざわ)桃吉郎の髪は憎たらしい。
皆、さらさらした福沢の髪が綺麗とか
端正な顔立ちと大きな瞳が素敵とか
背高くて勉強も運動も出来るのが良いとか言うが、
私に言わせれば、この男の全てが「嫌い」。
女子は福沢をイケメンと言うが、私は断じて認めない。
こいつの隣の席に座ること自体、虫ずが走る。
胡桃が楽しそうに福沢と話している時、私は福沢と目が合った。
「何?」と大きな目で睨む福沢に私は「今日もカッコイイね」と愛想笑いした。
舌打ちする福沢に私はすまし顔で応戦する。
―これもいつものこと。
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