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Forget me not!
―俺を忘れるな!
…福沢はこの状態を予期してあの手紙を渡したんだろうか?
それとも福沢に対する復讐を忘れるなということだろうか?
でも私はここ数日間で福沢を忘れたことなどあっただろうか?
脚本が完成し、それぞれの班に注文を出しに行く福沢の広い背中を私はいつも目で追っていた気がする。
白い歯を見せ、頬を赤くして笑う福沢の顔も、間に合わないと焦り泣き出す人達を慰める声も、全て私は見聞きしていた。
そうやって福沢を見ていると、復讐したいと思うほどの強い憎しみも、復讐に対する熱意もどこかへ吹き飛んでしまう。
福沢が模造紙でポンと私の頭を叩く。
その時、私は遠い日の記憶を思い出す。
小学校四年の二学期。
私の机で私の小説ノートを吉沢君(通称:よっしー)が皆と一緒に笑いながら音読したことから始まった私に対するいじめ。
私はそれから不登校になり、二週間後、父が家を校区外に買ったことで転校することになった。
私は転校の挨拶はせずに去り、次の学校で「普通」の生徒として生活していた。
でもそういえば引っ越し前日によっしーに会った気がする。
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