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「八重子、桃吉郎君に興味あるのぉ?」
笑いながらも少し苛立った様子で言う胡桃に八重子は思いきり首を横に振る。
「ないに決まってるでしょ!!」
「ふぅん」と言いながら踵を返す胡桃に七海と花蓮がついていく。
私は内心ドキドキしていた。
私の名誉の為に断っておくが、このドキドキは桃吉郎に対するものではない。
胡桃は桃吉郎のことを好きなのだ。
女の嫉妬は恐ろしい。
特にプライドが高く、気の強い胡桃なら、何をしてくるか分からない。
だから早いうちに疑惑は払拭せねばならない。
―でもここにKY男がいた。
1時間目の古文の時間。
「ねえ、教科書見せて」
けだるそうに私を見ながらひそひそ声で頼む桃吉郎を無視していると、白いセーラー服の袖を掴んできた。
私は桃吉郎を睨みつけ、桃吉郎の手を振り払う。
「…んだよ!」
不服そうな声を上げる桃吉郎を私は見ずに古文の教科書を開いた。
「教科書見せて欲しいなら、隣のクラスの人にでも貸してもらえば?」
頭にきた桃吉郎はガタンと音を立て立ち上がり、教室から出て行った。
八重子は開き放しの扉を見つめていた。
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