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…彼が……
……ここに……?
私は大きくため息が漏れるのを隠しもしなかった。
それを見た室長が、私をまるで慰めるように小さく笑顔をつくる。
「……そういうことだ。桐谷くんは渉さんがみえたら、遠野社長と同じように接してくれればいい。いいね?」
「あの、遠野社長が社長を退任されたら、私はどうなるんでしょうか?」
「心配しなくていい。遠野社長が会長になっても会長秘書というものは必要なんだよ。君はそのまま会長の秘書だ」
「……良かったぁ」
私……、これからも会長のそばで仕事が出来るんだ。
室長の言葉が私の中の不安を打ち消してくれるようだった。
例え、第一線をから身を引いたとしても、この会社、それにグループにおいても遠野社長は必要な存在だと思う。
なにより、私には必要な人だった。
私は、遠野社長とまた一緒にいられることに安心して
また、あたたかい光が差すものだとばかり思っていた。
けれど実際は、
その逆に、
私は闇の中に突き落とされることになったのだ―――。
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