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私の仕事は社長秘書。 グループ会社を30社ほど抱える本社の社長の秘書だ。 会社では秘書課に所属し、ビルの最上階の役員室に併設された秘書室に席を構えている。 私の受け持ちは会社のトップである会長兼社長。 白髪が少し混じった髪を綺麗にセットし、男らしく、柔らかい表情に浮かぶ目じりのシワは社長のチャームポイントと言ってもいい。 出来る男の象徴のように見えるその姿は、私に憧れのような感情さえ抱かせていた。 社長の名前は 遠野(とおの) 隆弘(たかひろ)53歳 私は社長を心から尊敬している。 彼の元で仕事ができることを誇りにも思っている。 仕事に明け暮れる毎日だけれど、社長のおかげでその日々は充実感に溢れていた。 一緒に仕事する仲間は同じ秘書課の 副社長秘書  磯山(いそやま) 理央(りお)24歳 常務秘書 西田(にしだ) 奈美(なみ)26歳 二人はたまたま歳も近いので、一緒に仕事をするようになって急速に親しくなった。 そして、この二人に加えて運転手が秘書課に属し、それを統括するのが 秘書室長 菊森(きくもり) 拓真(たくま)30歳 10名にも満たない小さな部署は、役員と共にビルの最上階に隔離された、少し特殊な部署だった。 ……少なくとも、 他の社員からはどんな仕事をしているのかほとんど知られていないだろう。
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