川崎 賢吾

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 蝉時雨が教室中に反響し、暑さを増幅させる。蝉時雨に負けない程の声で生徒に自己紹介していたのは今日この高校に赴任してきた新任教師の川崎賢吾だ。     川崎は黒板に熱血と書き、黒板を強く叩いた。 「これが、俺の好きな言葉だ」  暑苦しいし古いよ先生と数人の生徒が指を指して笑う。 「確かに古いかも知れないが、俺が一番大切なのは熱血だと思っている。俺の尊敬する金八先生のように」  川崎は腕組みをし得意げに鼻を鳴らした。一番前の席の生徒は金八先生って誰と呟いた。その生徒の隣に座っていた男子生徒が、ドラマだよドラマ、金八先生のモデルは尾木ママと言うと、さっきの生徒が、つまり川崎先生はオカマなん?と首を傾げた。 「違う!俺はオカマではない!ちゃんと女性が好きだ」と声を上げた。  授業が終わり、川崎は職員室に戻る。自分が受け持つ授業はお昼からしかないため、その間暇な時間が出来た。  自分でデスクに座り、クラス名簿を開く、まだまだ全校生徒な名前は覚えていない。  川崎は三年生の体育の授業担当で、一、二年生とは殆ど接点はないが、川崎はいつ挨拶されて、名前が解らず困らないよう、全校生徒の名前を覚えようと頑張っている。教頭先生に、無理して覚えなくても良いんですよと言われたが、川崎はそれでは駄目だと聞く耳を持たなかった。
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