川崎 賢吾

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 川崎はまだ教師なりたてで、右も左もわからない。子供の頃に金八先生を見て教師に憧れを持ち、教師となった。実家は小さな田舎村で農家をしていて、毎月畑で採れた新鮮な野菜が仕送りとしてくる。  お昼時間になり、一時間の休憩が入る。生徒も教師もこの休み時間に昼食を取る。  川崎は学校近くの蕎麦屋に入り、きつね蕎麦を注文した。蕎麦が来るまでの間新聞を読んでいると、不意に後ろから声が聞こえた。 「すいません、相席いいですか」  後ろを見ると、背広を着た若い男性が立っていた。お昼時とあってどの席にも客が着いていて満席だった。川崎は相席など気にしない質なので、了承した。その男性は「ありがとうございます」と川崎の向かいに腰を掛けた。 「人いっぱいですね」と川崎は男性に話しかけた。 「ええ、全くです。初めて入ったお店なので少し戸惑いました。貴方が相席を許可してくれなかったら今頃どうしていたか、店の前の自販機でカロリーメイトを買っていたかも知れません」 「ははは、カロリーメイトが昼食となるとその後の仕事大変ですね、果たして力が出るかどうか。あっ、相席の事はぜんぜん気にしないでください。そういうの平気なんで、私、川崎賢吾と言います。近くの高校の教師をやっています」 「教師ですか、それは凄い」 「凄くなんかないですよ、今日赴任したばっかりで右も左もわからない状態です」と川崎は首を横に振り謙遜した。
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