** 雪 **・

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「ちょっとコンビニ行ってくる…」 何年か目のある日の夜10時頃、母が寝たのを確認してから後を父に任せ、気晴らしに近所の時たま行くコンビニへと向かった。 そこは昔“リカーショップ temple island”と言う酒屋だったが、いつの間にか閉めてしまったようで、私が家を出ている間に全国展開のコンビニに変わっていた。 私はホットの缶コーヒーを一本買い、レジ横の飲食コーナーの高い椅子に腰かけると、コーヒーをゆっくり噛み締めるように飲みながら、通りを時たま走る車のテールランプを黙って見ていた。 「おひとつ食べませんか?」 ぼんやりしていた私は不意に声をかけられ、驚いて声のした方に顔を向けた。 そこには大学生くらいの男性店員が、にこやかに箱を持って立っている。 特別“イケメン”とまでいかないが、少し幼さが残り可愛らしさのある、感じのいい爽やかな店員さんだ。 「い…いえ…」 「昨日、同じ大学の友達の実家に遊びに行ったんで、そこの土産なんです。俺的にはココア味のがオススメで…」 「は…はあ…」 「あっ!いきなりすんません。あの…意外と美味しかったから…その…よかったら食べてください」 店員さんは焦ったように箱を開けようとすると、手が引っ掛かったのかぶちまけるよう中身を散乱させた。 「うわっ!?すんません…すんません」 「ぷっ…ふふふ…大丈夫ですよ」 可笑しくなって少し笑いながら一緒に拾い、しゅんとして『落としちゃったんで…』と蓋を閉めようとする彼の箱の中から一つ手にとった。 「コレ…ココア味、いただきます。ありがとうね」 「あ、はい。こちらこそ、ありがとうございます…ごゆっくり」 何のキャラクターかわからないけど、かわいらしい絵が描かれた袋の中にはクッキーが入っている。 甘過ぎない味が美味しい… 「ありがとう。美味しかったです。ごちそうさま」 私は店員さんに頭を下げると店を出た。
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