S.E.A. ～火の章～

日常から非日常へ

　廊下に出ると、まるで世界にアタシだけしかいないかの様に感じた。響き渡る上靴が無機質な床を叩く音が、無性に孤独感を湧き立てて行く。

　そんな中、一人廊下を歩いていると、上着のポケットに入っていたスマートフォンが振動し始めた。
恐らく電話かメールだろう――と、取り出してディスプレイを確認する。

「……アプリ？」

　予想に反し表示されていたのは、【Ｓ.Ｅ.Ａ.のダウンロードが完了しました】という文字。

　【Ｓ.Ｅ.Ａ.】……聞いた事が無いな。
自動ダウンロードなんてハタ迷惑な代物だ。

　タスクマネージャーを起動させ、先程インストールしたばかりのアプリを消去しようとした。

「……え？」

『アンインストールは出来ません』

　そう表示され、アタシは一人首を傾げる。
消去出来ないアプリケーションなんて聞いた事がない。

「後でショップに行ってみようかな」

　故障でもしたのだろうと、勝手に結論づけて再度ポケットへ仕舞いこむ。