無くした光

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「本日は~、晴天なり~」 空いっぱいに澄み渡った青空が広がり、地上のはるか上空に座する太陽が地面を焦がすなか一人の高校生がバッグを片手にゆったりとした足取りで歩いていた。 「今日もあっつぃな~。また、誰か熱中症で倒れるぞ」 高校生はさすがの暑さに気だるそうな表情を浮かべた。 時季は夏 地球温暖化の影響で気温が緩やかに上昇中での真夏日。 高校生にとっては一刻も早く家に帰って、クーラーをつけて、穏やかな冷気に包まれている室内でアイスを片手にラノベを読みたい気分なのである。 「あぁ~、だりぃ。太陽仕事しすぎなんだよ、少しは休暇とれ。労働基準法に反してるぞ、コノヤロ~。」 そう呟く高校生の額には大粒の汗がいくつも滲んでいた。 「訴えるぞー、なんぼのもんじゃあぁ、太陽がなんぼのもんじゃぁぁぁ」 あまりの暑さに頭がやられたのか、高校生が独り言をブツクサ呟きはじめた。 足取りはふらついていて、目も若干虚ろになっている様子はさながら、エサを求めて徘徊するゾンビのようだ。 「…俺のオアシスは、…この先にある…」 高校生の頭にあるのは家に帰ることだけだった。 だから、だろうか。 高校生はいつの間にか自分が歩道を外れ、車が行き交う道路に足を踏み入れてしまったのは…。 「……ぁ」 高校生は自分が歩道を外れていることを、はたして自覚出来ていただろうか? 高校生は自身が車に轢かれる、その瞬間を認識できなかった。 そして 高校生は この世界から姿を消した
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