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「…あれ?」
先ほどまでは、意識が刈り取られそうなほど暑かったのに、今は心地よい冷風が吹いていた。
「え…、ちょっ…」
は?
さっきまでくそ暑かったよな…。ホントに……。
…倒れるくらい。
「なんで…、って!ここ何処だよ」
あまりに異常な気温の変化に混乱した俺は、原因を少しでも理解しようと辺りを見渡すと…。
森、森、森、森、森
見渡す限りに、樹が生い茂っている。どこまでも、何処までも。
自身の周囲360度、すべてが緑に覆われていた。
「な、…なんだよ、これ…。どうなってんだよ」
俺は住宅街の歩道を歩いていたはずだ。それが、どうしてこんな場所に…?
頭の中に次々と疑問が浮かんでは消えていく。疑問に対する様々な憶測が頭の中に浮かんでいく。
すると、ある一つの答えが頭の中に浮かんだ。
「異世界トリップ…」
あまりにも荒唐無稽で、けれどもこれ以外に納得できる答えが思いつかない。
「異世界…、…そうだ。俺は異世界に来たんだ!!」
それに思い至った俺は気が付いていたら走り出していた。
どこへ?
…そんなのは知らない。
疲れない?
…こんなのヘでもない。
楽しい?
ああ!楽しいさ!!
「今までの人生の中でこんなに楽しいことはなかった!」
走る、走る、走る
木々の間を掻い潜るように俺は疾駆する。体の疲れなんて苦にも感じなかった。むしろ心地よかった、俺が疲れを感じれば感じるほど自分が異世界にいるのだということを実感できる。夢ではない、現実なのだと。
「俺は異世界に来たんだああぁぁ」
今、まさしく俺は異世界トリップを体験し有頂天になっていた。
自身の背後に迫る危険を察知できないほどに…。
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