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「オ・レ!!」
そうこの俺、小暮勇斗なのだ!
…と、頭の中で軽くねつ造プロローグを展開して現実逃避してみたが、なんの救いにもならなかった。
「さっき、結構な距離を走ったが未だに森を抜けきれないとはどういうことだ?」
見渡す限りにみえるのは木、木、木、いい加減ウンザリしてくる。
「まったく、Mじゃないから焦らされてもまったく嬉しくないぞ」
そう強気で呟くが正直内心、不安だった。ときおり吹く風や、それに呼応して揺れる草木…。それらすべてが不気味に思えてくる。
「普通さ、異世界に召喚されたら、必ず近くに誰かいるよね。なんで未だに人どころか、動物にすら逢えないなんてどういうことさ……」
思わずそう愚痴ってしまう。
俺はその場に体育座りして地面にのの字を書きはじめた。俺はすっかりいじけてしまっていた。
もう誰にも逢えないんじゃないか、そう思い始めたその時……。
突然背後からガサツ、と音がした。
思わずビクッ、っと身を竦めた。
…べ、別にビビってないよ。
「まったく、遅すぎるぜ!どこで道草食ってたターニングポイント!俺がどれだけこの時を待っていたと思っ……て…る?」
そう勢いよく振り返った俺の眼前には……。
一匹の獸がいた。
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