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「…………、」
天龍寺グループが雇った門番であるグレンの視線を感じながら、図書館の外に出たはいいけど、
「…………、」
か、会話がない。
こ、こういう時ってなに話せばいいわけ?
雪降ってなくてよかったとか?
「あの…………、仁さん」
「は、はひ! なんでふぅか!?」
か、噛んだ…………カッコ悪いな、俺。
「ふふ。慌てすぎですよ、仁さん」
「できれば忘れてください」
「お断りします。仁さんの醜態を知っているのは私だけですし」
「詩織さんがそんな人だったとは思いませんでした」
「そうですか? それじゃあ、これから知っていきましょう。お互いに、ね」
「…………、そうですね」
や、やばい。顔、ニヤけてないよな?
これ、脈ありだよな?
告白待ちってことだよな?
…………、いくらなんでも飛躍しすぎか。落ち着け、俺。
「そうそう。詩織さんの好きな食べ物ってなんですか?」
「そうですね…………焼き肉、ですかね」
「なんか、意外ですね。その、和食好きのイメージがあったんですけど」
「仁さんって肉好きな女の子は嫌いなんですか?」
「そ、そんなことないですよっ!? 俺はしお―――」
「しお…………?」
あ、危ねえ!? 暴露しちまうとこだった。
…………食べ物の話から告白じゃ、成功するもんも成功しないっての。
「えっとですね…………、しおラーメンですよ。しおラーメンが美味しい店があるんですよっ!? ほら、行きましょ、さあ、行きましょ!!」
この時の俺は焦ってたんだ。
だって。
「……………あ」
―――気がついたら詩織さんの手を握っていたのだから。
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