第一章 日常から崩壊への道筋

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「…………あ、あはは…………」 な、なにやってるの、俺!! なんで詩織さんの手を握ってんだよ!? あれか、焦りすぎて欲望のままに行動しちゃったのか!? …………き、嫌われた、か? 「その、すみません! すぐ、すぐに離しますから!!」 「だ、だめっ」 「……………………え?」 今、なんて言った? 俺の耳が正常なら『だめっ』って言わなかった? 「あ、えぇと、あの、ですね……」 詩織さんは顔をほんのり赤く染めながら、囁くように、 「寒いんです。そう、寒いんですっ。ほら、私、着物のまま出ちゃったから…………その、だから、手…………握っててくれませんか?」 「は、はい」 し、幸せすぎる。 心臓がバクバクって脈動しまくってるよ。 こんなに幸せでいいのか? その内、埋め合わせでとびっきりの不幸がやってくるんじゃねえの? 「あったかい…………です」 「そうですね」 もしそうだとしても。 今はこの手の中にある幸せを噛み締めていてもいいよな?
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