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「がっはっは。あんなに小さかった仁が、まさか女連れてくるとはな。しかも美人ときたもんだ」
厨房から顔を覗かせ、豪快に笑いながら、そう言ったのは十六夜の親父さん。
俺の父親は物心つく頃には死んでいたからか、『父親』っていうと親父さんの顔が浮かんでくるんだよな。
十六夜とはガキの頃からの付き合いだったから、必然的に親父さんとの付き合いも長いからかもな。
「で、どこまでいったんだ? もうヤっちゃったか?」
…………まあ、デリカシーなんかこれっぽちもない人だけど。
「あらあら。仁ちゃんが彼女連れてくるなんてねえ」
そう言ったのは十六夜の母親である静さん。
親父さんと並ぶと親と娘みたいに見えるほどの外見だ。
これで親父さんと同じ四十代とか詐欺だろ。
「彼女じゃないですよ」
「ふぅん、そうなんだ」
…………静さんにはなんでも見透かされているみたいで怖いんだよな。
こればっかりはバレてほしくないんだけど。
「まあいいわ。今日はお客さんとして来てくれたんでしょ。早く座って注文しちゃいなさい」
「あ、はい」
昼時を過ぎたからか、俺ら以外の客は一人しかいないし、結構早く食えそうだな。
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