第一章 日常から崩壊への道筋

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空いているカウンター席に座ったところで、隣にいる詩織さんが俺の袖をちょんちょんと引っ張って、 「あの、仁さん。一ついいですか?」 「どうしました?」 「そのですね…………十六夜さんでしたっけ。彼女とはどういう関係なんですか?」 あれ? 言ってなかったっけ? 「十六夜は―――」 「恋人です」 「―――ぶっ!!」 待て。 待て待て待て!! 「おま、お前なあ!! な、なに言ってんだ、こら!!」 十六夜の奴、俺と詩織さんの間に顔出して、なに言い出してんだ!? 「か、彼女さんでしたか。…………仁さんってお付き合いしている女性がいたんですね…………」 「ちょ、詩織さん、勘違い! それは完全な勘違いですからね! 十六夜は俺の幼馴染み。それ以外の何者でもな―――」 「裸の関係です」 「はっ、裸の関係なんですか!?」 「ば、馬鹿っ。変な言い方すんな十六夜! あのですね、十六夜の馬鹿は無視していいですからね!!」 とりあえず十六夜の奴を黙らせようとするが、一歩遅かった。 「一緒にお風呂入って、お互いの体を弄りあった関係です」 「え、ええ!?」 「ガキの頃に互いを洗いあっただけだろうがァああああああああ!!」 ……………………………………………………。 「あれ?」 な、なんか詩織さんがすっげぇジト目で睨んでいるんですけど。 「へぇ。そんな、そんなことしてたんですか。裸、裸でねえ。へえ」 「えっと、怒ってます?」 「まさか。怒ってるわけないじゃないですか。ええ、子供の時のことですしね。ええ、ええ、そうですよね」 「詩織でいいんですよね」 十六夜は詩織さんの耳元に口を寄せて、 「私、この前、仁に着替え―――覗かれたんですよ」 「へぇええええええええ!!」 あ、あの馬鹿…………ッッ!! あれは不可抗力っていうか親父さんに泊まっていけと誘われて、なんだかんだで偶然見ちゃっただけだってのに…………ッッ!! 本当のことだから、下手に言い訳すると、確実に追い詰められるじゃねえか!?
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