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4 【識別不能】
ガチッッ!! と。
薄暗い路地裏に歯を噛み締める音が響いた。
霧島はいつまでも震えていた口を無理矢理押し潰していく。
霧島の拳が痛いほど握り締められていく。
かつてないほどの怒りが全身に荒れ狂っていく。
「…………ざっけんなよ」
ボソリ、と。
霧島の中で荒れ狂い、溜まりに溜まった憤怒が放出した。
「ふっざけんじゃねえぞォォおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ゴギ、と。
霧島の拳が少女を握っている『鬼』の手に直撃した。
だというのに。
『壊れたのは霧島のほうだった』。
「く、そ、がァ…………ッ!!」
ガキバキバギゴギドカドガベキベゴッッッ!!! と。
鈍い音と共に霧島の拳が振るわれ、抉れ、潰れ、砕け、壊れていく。
まるで鋼鉄でも殴っているようだった。
強固な『装甲』に霧島の攻撃なんか、通用しなかった。
(わかってた)
拳を、足を、頭を。
全身の『武器』を振るい、『鬼』へと攻撃を続ける霧島。
そのたびに鮮血が飛び散り、攻撃に使った体が破壊されていく。
(テメェが俺の想像を超えた化け物だってことはわかってたんだよ。だから無様に怯えていたんだろうが)
だが。
霧島は止まらない。
自分の攻撃など目の前の化け物には雀の涙ほどもダメージを負わせられていないことを自覚しながら。
それでも。
「テメェなんかに…………ッッ!!」
歯を噛み砕く勢いで喰い縛り。
拳を握り潰す勢いで握りしめ。
―――霧島仁は叫んだ。
「話したこともねえ人間を助けようとする馬鹿女を殺させはしねえッッ!!」
そして。
化け物の一撃が霧島の右肩を粉砕した。
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