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右肩を構成していたモノが飛び散り。
ぼとり、と。
右腕が地面に落ちた。
「ひ、ぁ…………っ?」
遅れて、断面より間欠泉のように、勢いよく鮮血が噴き出した。
地面が霧島の血で染められていく。
「雑魚が『鬼』の王に手を出すから、そうなるんだ」
呆然と。
ただただ呆然としていた霧島の耳に『王』の言葉が滑り込む。
「この女が貴様を護ろうとしたことがそんなに嬉しかったのかは知らんが、ついさっきまで怯え、恐怖し、なにもしようとしていなかったくせに―――どうして今さら動いた?」
「うる、せぇよ…………」
視界は朱に染まり、足は今にも崩れ落ちそうで、途切れそうな意識を無理に繋ぎ止めながら、霧島は吐き捨てるように、
「確かにその女が逃げろなんて馬鹿なこと言わなかったら最後まで動けなかったかもしれねえ。だからどうした。『俺は一歩踏み出した』。なら、あとは突き進むだけだろうがよ!!」
意識は朦朧としている。
これ以上『鬼』と関われば確実に死ぬのは避けられない。
それでも。
一歩踏み出してしまったのなら。
こうなるとわかっていて、なお、踏み出したのなら。
中途半端で終わらせられるか。
あの少女だけは助ける。
―――俺の目の前で誰も死なせやしねえ。
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