第二章 たった一人の軍隊

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1 【安藤十六夜】 馬鹿が帰って来ない。 「携帯も無視、か」 時刻はすでに午前三時。 電話してもコールが鳴るだけ。 仁のやつ、桃色の客に古びた巾着袋を渡しに行ってから、音信不通って、なにやってんだか。 「別にここが仁の家じゃないし、私はただの幼馴染みだし、別にあの馬鹿がどこでなにしてようが関係ないけど、あれよ、ラーメン注文しておきながら食べに来ないのが気に食わないのよ。そうに決まってる!!」 …………、誰に言い訳してるんだか。 「寝よ寝よ。もーあんな馬鹿知らないんだからっ」 そう言って布団に入ったのが一三回目。 そして。 「…………、もう一回だけ、電話してみようかな」 こう言って布団から出たのも一三回目。 馬鹿なことしてる自覚はある。 でも、あれよ、その、幼馴染みとして仁のことは逐一把握しておかないといけないのよっ。 「だから誰に言い訳してるんだか」 自分の心の声にまでツッコんで、スマホの電話帳の『幼馴染み』をタッチして、耳にあてて、機械的で単調なコールを聞くこと三分。 いくらなんでも待ちすぎ、いやでもカップラーメンを待つのに忙しい、いやそれはないか…………なんてアホなことを考えていると、 『…………十六夜か。どうした?』 スマホから馬鹿の声が聞こえてきた。
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