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「仁!?」
『うおっ。いきなり大声出すなよ』
この、馬鹿…………私がこんな時間まで起きるほど滅茶苦茶心配させておいて『どうした?』だって…………?
「あんたねぇ~。今までどこでなにしてたのよっ」
『どこでって…………路地裏かな。俺も今さっき「起きた」ばっかでパニクってるんだよな』
「なに言ってるのよ」
『「右肩が元通りなんだよな」』
…………どういうこと?
『夢、にしてはやけにリアルだったしなぁ。そーいや、あの子は無事なのかな』
聞きたいことはあった。
言いたいことはそれ以上。
だというのに、
『ま、いいや。周囲には「誰もいない」し、路地裏なんてさっさと出ていきますか』
仁はどんどん進めていく。
そのことに私は言い様のない不安を感じていた。
まるで暴れまわる大型犬のリードから手を放すような感覚が広がっていく。
このままじゃ仁が私の知らない、どこか遠くに行ってしまうような嫌な感覚。
気がつけば、私は『それ』を振り切るように叫んでいた。
「仁! 今すぐ家に来なさい!」
『は?』
「ラーメン、そうラーメンよ! 注文しておいて食べないなんて許さないから!!」
『いや、明日…………、っていうか今日だが、今日の夕方くらいじゃ駄目なのか?』
「絶対駄目っ。今すぐじゃないと、えっと、釜茹での刑っ!!」
『ペナルティでかすぎだろ』
呆れたようにため息をついた仁は、仕方ないとでも言いたげに、
『まあいいや。俺も腹へってたし、近くにいるからすぐに行くけどいいよな?』
「う、うんっ」
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