第二章 たった一人の軍隊

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通話を終えた私の行動は早かったと思う。 営業も終わり、寝ているであろう両親を起こさないよう足音をたてずに自室から出て、二階から一階の『店内』へと降りて、厨房に入って各種準備を整え終わった頃に仁が来たのだから。 …………よかった。間にあった。 「こんばんわ…………、でいいのかね」 「一応言っておくわ。いらっしゃいませ」 「心底嫌々ってのがよーく伝わってくるよ」 適当に言いながら仁はカウンター席に座った。 カウンター席の向こう側が厨房になっているから、仁の顔がよく見えるのよね。 「はい、しおラーメン」 私は予め『準備』しておいたラーメンを仁に差し出す。 「おう」 それを受け取った仁は箸を取りながら、 「ある程度見て回ったが、あの女も『鬼』もいなかったし、こりゃ本格的に夢かもな」 「なんの話?」 私の問いかけに仁は肩をすくめ、 「さぁな。俺にもさっぱりだ。まあ、一つ言えるのは…………」 ずるずる、と麺を啜った仁は口の中の麺を飲み込んで、こう言った。 「さすがラーメン屋の娘だ。メッチャうまいぞ、これ」 「…………、ふん。当たり前でしょ。仁みたいな馬鹿でも味覚は正常なようで安心したわよ」 「素直にありがとうって言えねえのかよ」 「うっさい。休校だからって女連れ込みやがって! ホントデリカシーがないんだから!!」 「…………なんで怒ってるわけ?」 「怒ってるわよ!!」 「…………そこは怒ってないわよじゃねえのか?」 「うっさい。人の間違いをほじくり返すんじゃないわよっ。馬鹿、変態、クズ野郎!!」 「落ち着けって。馬鹿以外はなんで罵倒させたか、わかんねえぞ」
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