第二章 たった一人の軍隊

6/57
前へ
/103ページ
次へ
時折包丁を振り回しながら、仁と『あの女』の関係を聞き出してみたけど…………なんていうか、ちょっとヤバイかも? 「ご馳走さま」 律儀に手なんか合わせてる仁を見ながら、私は断片的な『情報』を整理していく。 曰く、『あの女』は天龍寺の長女・天龍寺詩織というらしい。 曰く、知り合ったのは今年の四月(高二になった頃)らしい。 曰く、私営図書館の唯一の司書であり、暇潰しに読書に行っている内に仲良くなったとか(そういえば高二になってから、漫画くらいしか読まなかった仁がまともな文章で構成された本を読み出したっけ) 曰く、放課後や休日はほとんど図書館で逢っているらしい(付き合い悪くなったと思えば、図書館に通いつめていたからだったんだ) つまり、これはあれよね…………、この馬鹿、完全に惚れてるよね? ってか『あの女』について話してる仁の声色が『友達』を紹介してるようには思えなかったんだし。 ―――ほぼ確定、かな。 「死ね」 「うぉおおおおっ!! お、おま、なにしてんだっ!?」 なにって、包丁降り下ろしただけだけど? 必死になって避けなくったっていいじゃん。 「冗談よ。ノリ悪いわね」 「じゃあ聞くけどよ、どーゆーノリを期待してたわけ!?」 「刺されてよ」 「マジで死ぬから! せっかく生き残れたっぽいのに死んじゃうから!?」 …………? さっきからちょくちょく理解できないこと言ってるし、『こっち』も聞いておいたほうがいいよね。 「さて。冗談はここまでにして」 「ホントに冗談だったんだよな? あれ、ホントに洒落にならないからな?」 …………言えない。無意識だったなんて絶対言えない。 ってか、そんなに必死の形相しなくたっていいじゃん。 「ケチケチしないで刺されてよ」 「やっぱ本気だったかこの野郎!!」
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加