第二章 たった一人の軍隊

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2 【霧島仁】 やっべぇ。 「完全完璧な寝坊だな」 スマホで時間を見ると、ちょうど九時。もう一時間目始まってるよ。 奇跡を期待して窓から外を見てみるが、昨日と違って晴れていた。日差しが眩しいくらいだ。 「ったく。ツイてねえなあ」 昨日、詩織さんと手を繋いだ瞬間が最高点だったのかねえ。 その後、『鬼』に襲われたり、十六夜に殺されかかったり(冗談……だよな?)散々だったしな。 「それに比べれば寝坊なんかカスだな。どーってことねーよ」 とはいえ。 いつまでも現実逃避している暇はない。 幸か不幸か学ランはあるし、教科書類は全部机の中に押し込んでるから、急いで準備すれば二時間目には間に合うだろ。 「十六夜、起きろ」 そんなわけで隣でグースカ寝てる十六夜の肩を揺すると、 「う、ぅん。…………、キスしないと起きない」 「はいはい。起きたらキスしてやるよ」 いつも通りからかってきたから適当に返したんだが、 「…………っ!? ほ、ホント!!」 いきなり跳ね起きやがった。 こりゃ、あれだな。キスネタで俺を弄る気だな。 だが、そうはいかねえ。俺だっていつまでも弄られてばっかじゃねえぞ。 「ほ、ほら、起きたよ。き、きききキスするんでしょ!?」 「ちょっ、」 明確なアクションをとる前に十六夜が俺の上に馬乗りになりやがった。 寝るときにほどいてなかったポニーテールが俺の頬を撫でるが、十六夜はそんなことを気にせず、早口で捲し立てた。 「ほら起きたよ早くキスプリーズ!!」 「な、なんでそんなに必死な訳!?」
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