第一章 日常から崩壊への道筋

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結構積もった雪をザクザク踏みしめながら、二〇分。 ようやく目的地である図書館に到着。 「傘、持ってこればよかったな」 寒い。もう、なんか、学ランがじっとり濡れてるよ。 「チッ、クソガキかよ」 『天龍寺図書館』という看板の横に門番のように立っていたリクルートスーツの中年男が、そう言ってきた。 確か、名前はグレンだったか。 傭兵くずれの超人が俺を睨んでいるよ。 「なんだよ、グレンさんよ」 「テメェはいつもいつもここに来るよな」 「詩織さんに逢いたいからな」 「ここは図書館だ」 「知ってるけど、それが?」 「なら本を読みに来い。詩織様と雑談せずにな」 「それ、無理」 適当に返しながら、俺は図書館の中に入っていく。 ここって近くに国、いや町か? 興味ないから知らないけど、そこら辺が運営している図書館があるのに、天龍寺グループが私営で建てたんだっけ。 俺的には天龍寺の長女・天龍寺詩織さんが司書さんやってるっていう事実が重要なんだけど。 「しっかし、普通の図書館と一緒で貸し出しに金とらないのに、なんで図書館なんて建てたんだろうな」 ふと出てきた疑問を口にしていると、奥から心地よい『歌』が聞こえてきた。
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