私とワタシ

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 時はだいたい半世紀ほど前か。  ワタシはこの森で発生した。  ワタシを作ったものが親だというのなら、  森がワタシのそれに当たるらしい。  でも、生まれた時に既にワタシは私だったせいだろうか。  育てられたことがないから、どうもそこらは曖昧だ。  ワタシが生まれた理由は、分からない。  "産まれた"ではなく"生まれた"からには、それには理由があるはずだけど、私にはさっぱりだった。  でも、勘違いされては困る。  わからないことは多かったけれど、何も知らないわけではない。  私は魔法が使える……、らしい。つかったことはないけど。  私は不老不死らしい。  これは本当。  生まれた日から、私の容姿は変わっていない。  確証はないものの、当たり前のこととして私の機能は理解していた。  わからないのはその用途。  何のために私は生まれたのか。  いや、何の目的でこの森は私を生みだしたのか。  それだけは、どうにもわからなかった。  だってあまりに退屈なんだ。  暇で暇で死んじゃいそうなくらいに。  そういえば一度  不老はともかくして  本当に死ねないのか、なんてどうでもいい疑問を解消するため  長い間何もしないでただボーっとしてみたけれど。  空腹過ぎて断念した。
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