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わけも分からぬまま、ただただ優しく与えられる愛撫が、体を蕩けさせていくのが怖いのに逆らえない。
何度も内部を抜き差しされる指の動きに翻弄されて、しばらくしてから体をつっぱって深月は小さく痙攣した。
それを見て雅人はフッと笑う。
「イケた?」
「イケ……た?」
「知らないの?」
「分かん、ない」
目の前の人物が光希ではないと分かっていても、似た形の深月の様子に、雅人は人知れず支配欲に心が震えた。
――光希……
自分の手の内で体をくねらせる深月に、雅人は少しずつ興奮を覚える。
何度も違うと否定するのに、精神が追い付かない。
「ミヅ」
わざと名前を呼んで視線を合わせた。
潤んだ瞳を持ち上げて雅人を見つめると、瞼をゆっくり閉じて瞬きをする。
じっと見つめ合ってから、雅人は深月の腹部へと手を這わせて撫でると、また反応する身体。
それに耐え切れず、雅人は濡れた服をバサリと大きく音を立てて脱ぎ落した。
そのまま起ち上がり、勢いのまま部屋奥に見えるベッドへと、深月を抱き上げて運ぶ。
乱れた衣服を有無を言わさず剥ぎ取って布団の中へと押し遣ると、ズボンをずりおろしながら、財布に忍ばせていた避妊具をそっと出した。
もう、止められない――そう思いながら雅人はパンツ1枚で深月のいる布団へと潜り込んだ。
「井筒、くん……」
思考が追い付かない状態で、身体が優先していたけれど、その呼び名にはたと気が付き、雅人は動きを止めた。
光希は井筒君などとは呼ばない。
そうだ、この人は光希ではないのだ――と改めて実感させられる。
けれどそれを自覚したとて、今は無性にただ抱きしめて、抱きしめられて、ただ二人だけの世界に浸りたかった。
雅人もまた、逃げていたかった。
「井筒君は、味気なさすぎるよ」
「え……?」
「雅人って、そう呼んでくれる?」
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