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生緩い会話を断ち切るように上杉さんは真剣な声色で話を進める。
「今お前は魔力をどんくらいの濃度にしようと思った?」
「…"普通"くらいですかね?」
まるで殺人事件の聴取のような上杉さんの雰囲気に少々飲まれながらも、冷静に返す。
「…マジかよ。」
「何が……」
不可解な言葉に言及しようとし、遮られた。上杉さんが次なる言葉を紡いだからだ、ワザとやったのかも知れない。
「お前は魔力のコントロールが拙い。魔力は繊細だ、もっと優しく、少量の魔力で包む感じでやってみろ。」
ダルそうだが、的確かつ、理にかなったアドバイスにほの字になる口を閉じて、再び瞑想をする。
…
大輔が座禅をくみ、目を閉じた所で上杉は戦慄していた。
上着にしまっていたスピードガンにも似た機器を取り出すと、その数値を見て再び全身の毛が逆立つ。
(…学生の作れる魔力濃度じゃねぇよ。間違えてもこれは世間的にも、"普通の密度"じゃねぇ。)
あの湯気のように魔力が消え去る現象は魔力濃度が異常に濃く、術者がコントロールできなくなったために起こる現象。
上杉の手に収められた機器の示した数値には0が幾つも並んでいた。
(…こいつ、もしかして…)
「おぉ!!」
続きを心中で言おうとして目の前の少年の叫び声に心の声は断ち切られた。
見ると、青白い鎧を纏った大輔はその両の双眸を感動で満たしていた。
(理事長に報告すんのは、もう少し様子見てからにすっか…)
心の中でボヤいて無邪気に笑う少年を前に柔らかな笑みを浮かべた。
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