第0話ー背中を押す言葉ー

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最後の大会二ヶ月前、部活帰りの通学路で飲酒運転の車がタカシに突っ込んで来た。 …タカシは右足に剥離骨折という大怪我をした。 治癒魔法を施しても、二ヶ月で以前の動きを取り戻せる怪我じゃないと、医者から大会は諦めろって言われた。 …でもタカシは最後の大会に出た、しかもタカシの鬼気迫るピッチングで準優勝だった。 俺の過去の回想を断ち切りタカシの声が受話器から聞こえてくる。 『就職したら、人生面白くねーぞ?魔法が下手でもいいじゃんか。俺は応援してるぜ?』 「…タカシ。」 『ん?』 声が震える、目が熱くなる、不安が押し寄せて来る、スッゴイ怖い、…けど、俺の決意を言う。 「俺…行くよ。聖龍学園。」 『おう。頑張れよ。』 その言葉はどこまでも力強く、俺の背中を押してくれた。そして、俺の手に握っていた求人雑誌はゴミ箱に投げ捨てた。 『んじゃ、明日送迎会やろうぜ!皆呼ぶからさ!』 「なぁタカシ。」 『んだよ?盛り上がってんのに空気読めよ。』 「ありがとな。今度は俺が救われたよ。」 『…おう。』 電話越しにあいつが笑ってるのが分かった。 電話を切って窓から見上げた空に雨雲はなく、晴天の青空に七色の橋が架かっていた。
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