混乱

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にも関わらず、売り切れ続出になるほどの現象が起きたのは、やはり【芥川賞効果】です。 著者が受賞の喜びを記者会見の場で語り、その模様をテレビで放映されれば、いやでも注目を集めます。 出版社は慌てた筈です。 「だから俺は、あれほど言ったんだ。もっと早くに増刷しとけって」 「ええーっ? そうでしたっけ? 部長は【芥川賞】は別の作品が選ばれると見ていた筈では……」 「ええい ! うるさい !! お前も同罪だ。とにかく読者の熱が冷めない内に重版を急がせろ !! 」 「はは、はいーっ ! 」 これは、僕の想像です。念のためですが。 しかし、この書籍が、これほどに注目を浴びた理由は、実は芥川賞効果だけではありません。 著者の年齢です。黒田夏子、75歳です。 (有名人には敬称は省略して良いのです。夏目漱石やイチローを、さんづけで呼ばないのと同様です) この高齢で前年に【早稲田文学新人賞】に応募し、それが評価されたのです。 これには僕も【ど胆を抜かれ】ました。
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