灰色の街

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 人生薔薇色。薔薇の花のように鮮やかな紅色で、栄華の限りを尽くすこれからの事を指す。  だったら、ひもじい思いばかりの僕の人生は何色?  心の底ではわかっていた。ただ、認めたくなかった。  僕は、目の前にそびえ立つ無骨なコンクリートの壁にそっと手をあてがう。誰にも聞かれていませんように、と小さく唱えてから呟く。  きっと、このモルタルと同じ色。薄暗くて汚ならしくて目立たないネズミ色。  地道に生きて働いて大損して苦労して悶えて息絶えて。最後の最後、散り際になって気づくのだろう。  世の中はくだらないって。皆、呼吸だけ続ける人形に変わりないんだって。  でもまぁ、そんなのは僕が朽ちてから話。僕は今を生きたいから生きているんだ。  それに、まだこの世の中は捨てた物じゃないと思っている。  ……これがきっとネズミ色思考。モルタルシンキング。
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