第1章:アンケートは正直に

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 なんだこれ、ちょっと恥ずかしい。俺の失敗じゃないのに。  まぁ、単に飛ばされたのなら最後には配られるだろう。手元に一枚だけ残るはずだし。  俺は、全員に配り終わるのを黙って待つことにした。  最後のひとり、綿見に結果が返されるまでには五分とかからなかった。クラスの皆は自分の将来を左右するアンケートの結果に一喜一憂し、互いに見せ合って談笑している。  そんな中で、俺はといえば。 「……なぜだ!?」  一人だけ返却されず、談笑にも加われないでいた。 「よし、これでみんな返されたな。それじゃ今日は解散だ。きりーつ、きをつけー」 「うぉーい! ちょっと待って! 待ってください!!」  俺は全力で、帰りのホームルームを締めくくろうとするアホ教師を止めにかかる。このままでは結果を返されないまま家に帰されてしまう。 「先生、まだ俺返されてないんすけど」 「……チッ」 「舌打ち!?」  なんて教師だ。生徒に自分のミスを指摘されて舌打ちするとは。 「あのなぁ、今クラスの皆はまさに帰ろうとしてるんだよ。放課後を満喫しようとしてるんだよ。何故お前一人にそれを止める権利がある? 無いだろ? それじゃ、きりーつ」 「いやいや、あるよ! 何故先生に俺の結果だけなかったことにする権利があるんだよ!」
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